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心不全 パンデミックがやってくる?!

 コロナ禍で有名になった言葉の一つに「パンデミック」があります。パンデミックとは大流行という意味を持ちます。では、「心不全パンデミック」とは一体なんでしょうか?  「心不全パンデミック」とは、文字通り、心不全の大流行が来るということです。現在の日本は高齢化社会に突入しています。それに伴い、心不全の患者数は毎年1万人ずつ増加しており、2030年には130万人に達すると推計されています。

心不全とは?

 心不全とはどのような病気でしょうか?心不全とは、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。40歳以上の人が心不全を発症するリスクは5人中1人と言われています。また、心臓の機能が悪いと診断されてから5年以内に死亡する人は、前立腺がん・乳がん・膀胱がん等よりも多いのです。そして、全世界で65歳以上の患者における入院理由の第1位が心不全なのです。


心不全の主な症状

 心不全の主な症状には、「むくみや体重の増加」、「息切れ」、「夜間の咳や呼吸困難」、「だるさ」などがあります。このような症状があれば、速やかにかかりつけ医や専門の医師を受診しましょう。

  • むくみや体重の増加
  • 息切れ
  • 夜間の咳や呼吸困難
  • だるさ

血圧が140/90mmHgを超えたすぐに受診を!

 また、このような症状が出る前の「心不全予備軍」や「隠れ心不全」のうちに治療を開始することも重要です。心不全の原因となる高血圧は、お困りでなければ放っておいてしまう人が多いですが、それはやがて心不全へとつながります。 血圧が140/90mmHgを超えてしまうようであれば、すぐに受診しましょう。さらに、心不全では腎臓の機能も悪くなってしまいます。健診などで、尿たんぱくが出ている人は、腎臓の機能が悪くなっている可能性が考えられるので、こちらもすぐに受診をしましょう。腎臓が悪くなってしまってからでは、心不全はもっと死亡率が上がってしまいますので注意が必要です。


 心不全は、いまや、がんよりも緩和ケアを必要とする患者が多い病気です。心不全が悪くなってしまって、つらく苦しい治療や生活になる前に、早めに受診をして、健やかな将来のために備えましょう。

心不全の進行ステージ

図 参考| 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

2022年3月18日
循環器内科 小船 雅義
日本内科学会総合内科専門医