pediatrics小児科
溶連菌感染症
どんな病気?
「溶連菌」は正式には「A群溶血性レンサ球菌」と呼ばれる細菌で、主にのどに感染し、のどの痛みや発熱を主な症状とする「咽頭炎」や「扁桃炎」を引き起こします。幼児から学童期のお子さんによく見られる病気です。
主な症状
以下の症状がよく見られます。
※発症頻度は、目安です。
①のどの痛み 発症頻度:約90〜95% |
飲み込むと強く痛がることがあります。発症の最も典型的な症状です。 |
②発熱 発症頻度:約80〜90% |
38〜39℃の高熱になることが多いです。微熱のみのケースもあります。 |
③頭痛 発症頻度:約50〜60% |
発熱や全身症状に伴って現れます。 |
④首のリンパ節腫脹 頻度:約50〜60% |
耳の下やあごの下が腫れて痛むことがあります。 |
⑤腹痛 発症頻度:約30〜40% |
特に小児に多く見られ、虫垂炎(盲腸)と間違えられることもあります。 |
⑥嘔吐 発症頻度:約20〜30% |
腹痛と一緒に見られることがあります。 |
⑦イチゴ舌 発症頻度:約10〜20% |
舌の表面が赤くザラザラし、イチゴのように見える状態です。 |
⑧発疹 (猩紅熱) 発症頻度:約10〜15% |
細かい赤い発疹が体に出てザラザラした手触りに。痒みを伴うこともあります。3~5日で自然に消えます。30~60%の人に落屑が見られます。 |
⑨咳・鼻水 発症頻度:約10%未満 |
ウイルス感染と違い、咳や鼻水はあまり目立ちません。 |
⑩落屑 発症頻度:約10%未満 |
感染後1~2週間で、手足の指先、脇や首、足の付け根や顔の周りの皮がむけることがあります。特別な治療は不要で、通常のスキンケアや保湿で様子を見ます。1~2週間で落ち着きます。 |
診断と治療
- 診断は、綿棒で喉をこすって調べる迅速検査で行います(結果は5〜10分程度で出ます)。
- 治療には抗菌薬(抗生物質)を使用します。通常はペニシリン系のお薬を10日間服用します。途中で症状がよくなっても、最後まで飲みきることがとても大切です。
- 抗菌薬を正しく服用することで、症状の早期回復だけでなく、リウマチ熱のような合併症の予防にもつながります。ただし、急性腎炎については、抗菌薬を使っていても発症することがありますので、治療後も尿の色や量、むくみなどにご注意ください。
合併症について
通常は治療により速やかに回復しますが、ごくまれに以下のような合併症が起こることがあります。
急性腎炎 (感染者の約0.1〜0.3%)
溶連菌感染から1〜3週間後。血尿(赤〜茶色の尿)、尿の回数が少ないむくみ(特に顔)、高血圧などが見られます。多くは自然に治りますが、入院や定期的な尿・血圧の経過観察が必要になることもあります。
リウマチ熱 (非常にまれ、日本ではほぼ消失傾向)
関節の痛みや腫れ、発熱、心臓への影響(心臓弁膜症)が出る可能性があります。
※リウマチ熱は、抗菌薬の服用によって予防できることが知られています。
【補足】高血圧性脳症について
- 溶連菌感染から1〜3週間後。頻度は非常にまれ(感染者の10万人に1人以下)ですが、腎炎に伴って、急激な高血圧によりけいれんや意識障害を起こす「高血圧性脳症」が発生します。尿の異常が目立たない場合でも突然発症することがあります。
- けいれん・激しい頭痛・嘔吐・視覚異常などの症状がある場合は、救急受診してください。
登園・登校の目安
厚生労働省のガイドラインでは、抗菌薬の内服開始後24時間以上が経過し、かつ症状が改善していれば登園・登校が可能とされています。(感染力が大きく下がるため)ただし、お子さんの体調が完全に回復しているかは、主治医と相談して判断してください。
ご家庭での注意点
- 処方された薬は最後まで飲みきることが大切です。
- 連菌感染後1〜3週間のあいだに体調の変化があれば、尿の色やむくみ、頭痛・けいれんなどの有無にご注意ください。
- 感染力は比較的強く、家庭内で約20〜40%の確率で感染するといわれています。咳やくしゃみによる飛沫感染、手やおもちゃなどを介した接触感染で広がります。特に、小さなお子さんや兄弟姉妹間では感染しやすくなります。予防の基本は「手洗い・咳エチケット・接触を減らすこと」です。
- ご家族の中に似た症状の方がいる場合は、早めの受診をおすすめします。
- ご家族の中に症状がない保菌者がいることもあります。ただし、症状がない場合は通常は検査・治療の必要はありません。
2025年7月4日
小児科 福井 舞
日本専門医機構認定小児科専門医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医